国際収支の分析からみた財政赤字についての着眼点

大蔵省の財務官といえば事務次官級の職位で為替など国際的な業務を担当し、歴代「ミスター円」などと呼ばれる。

前財務官の神田眞人(かんだまさと)氏が文藝春秋9月号の特集「日本経済伸るか反るか」のなかに「日本はまだ闘える」と題して寄稿している。

今年財務官当時、様々な分野の専門家を集め、国際収支のデータを「日本を診察するための道具」と見立てて日本経済の課題と対応策を取りまとめ、その内容を一般向けにかみ砕いて説明したものである。

その結論は、必要な改革を怠れば深刻な事態に陥るが、他国がやっているような市場メカニズムに新陳代謝を委ねて生産性や賃金の上昇を図るいう普通の政策をしっかり実施出来れば日本は復活出来るというものである。

詳細内容はここでは触れないが、この多岐にわたる分析のなかで私が日ごろ最も気になる国の財政赤字について、直近の状況を二点指摘し注意を促している部分があり、とても興味深く読んだ箇所を整理書いておくことにした。

①従来その殆どを国内で消化していた日本国債だが、現在の海外投資家の保有率は14%程度有り今後もその消化の依存は一層高まる。

その為彼らの財政への信認が失われると大変なことになるということを意識しておく必要がある。

日本人の投資行動において自国通貨(円)資産を好んで保有する傾向が弱まっている。その状況では海外資産に匹敵するくらいリターンを高めない限り内外投資家は円資産に投資しない。

今後国債が国内において低金利で消化されることを当然視することは出来ず、より高いリターンを求める投資家に促される形で金利が一段と上昇する可能性を考えるべきである。

🔘赤字額や率の問題とは別の視点で、今まで以上に財政赤字の持つ危険性が高まっていることを示唆しているように見受けられる。

首都直下地震南海トラフ地震など大災害に直面する前に何としても財政再建に道筋をつけておく必要があると感じる。

🔘これを書いている途中、次期アジア開発銀行総裁に政府がこの筆者を擁立するというニュースを読んだ。

🔘今日の一句

 

故郷の通学路にて野菊待つ

 

🔘施設の庭の片隅、ムクゲ木槿