「マクナマラの誤謬(ごびゅう)」

NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀バタフライエフェクト」のなかで「マクナマラの誤謬」が放送され長い間録画していたのを観終えた。

放送からかなり時間を置いて観てしまったが、もう少し早く観るべき番組であったかも知れない。

誤謬とは単純に誤りのことだが、番組の最初の段階で「マクナマラの誤謬」の意味が解説されるのでここでも先に説明すると、データ分析の天才といわれベトナム戦争当時の米国国防長官・ロバート マクナマラにちなんで名付けられたもので、定量的なデータのみにて決定を下し他の全てを無視することによって全体像を見失う誤りのことを言う。

私の若い頃ベトナム戦争は常にニュースの中心にあり、ホーチミン、ボーグエンザップ、ゴディンジェム、グエンカオキ、などの人名が行き交っていたが、マクナマラも記憶に残るひとりである。

マクナマラアメリカ兵の死亡数と敵兵の死亡数に着目し、アメリカ兵の死亡数よりベトナム兵の死亡数が多い限りアメリカは勝利への道を歩んでいると定義した。

このため米軍は敵の死者数データを上げることに夢中となり、民間人を数に加えたり水増しなどが横行した。またその延長線上からベトナム人愛国心アメリカ人の反戦感情などへ目を向けることが無くなり300万人以上の犠牲者を出す泥沼化とアメリカの敗北という結果を招いた。

私の現役時代の後半部分では、日本の至るところで目標管理という言葉が世間でもてはやされた。

目標を定量化してその数値の達成状況を評価しようとするものであったが、例えばあらかじめ低い目標を設定すると達成率が自然に高くなるとか、仕事のプロセスが評価されにくいなどの疑問点があり、まさしく「マクナマラの誤謬」を言い当てていたような部分があった。

数値で管理することももちろん大切であるが、この数値をベースに、物事を大局的に見て、隠れている部分や数字に出てこない感情的なものなどを総合的に判断することが如何に大切かを示唆してくれる番組であった。

現在のロシアとウクライナの戦争も物量同士のぶつかり合いから、最後は数値に出ない愛国心、敵愾心と厭戦気分との戦いなのかも知れない。

🔘一日一句

 

去年(こぞ)よりも病葉多し沸騰す

 

🔘近くの庭のツキミソウ(月見草)