映画「舟を編む」

2012年に本屋大賞を受賞した直木賞作家・三浦しをんさんの小説「舟を編む」は、当時娘から頼まれて文庫本を購入して渡した記憶があるが、私自身はまだ読んでいない。

その「舟を編む」の映画がNHKBSで放映され録画して観ることが出来た。日本アカデミー賞を受賞したという話は聞いていたが噂に違わず地味ながら見応えのある映画だった。

兎に角出演者が主演の松田龍平をはじめ宮﨑あおい、黒木華オダギリジョー等の若手有望株で、彼らをバックアップしているのが、加藤剛小林薫八千草薫渡辺美佐子等々でこれだけ並べられると集中して鑑賞せざるを得なくなる。

筋書きはもう周知の通り国語辞書を編さんする仕事に就いた青年が15年かけて遂に完成にこぎ着けるまでを、私生活や周囲の人間像を交えて描いていくもので、その編さん作業のプロセスが実に丁寧に表現され、原作を読まなくても読んだような気にさせる映画である。

映画のなかで「右」とは何かを言葉の例として取りあげる場面が出てきたが、主人公が答えた「西を向いたときに北に当たる方」には言葉の真髄を云われたような気がして鳥肌が立ってしまった。

私は長年辞書作りとは真反対とも云えるものつくりの現場で働いてきたが、中身は違えど仕事を突き詰めるプロセスは何も変わらないことを改めて知らされたような気がしている。

辞書作りの監修者で国語学者を演じる加藤剛さんが居酒屋で語る台詞は題名も包含して深い。

『言葉の海それは果てしなく広い、辞書とはその大海に浮かぶ一艘の舟だ。人は辞書という舟で海を渡り自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。それは唯一の言葉を見つける軌跡、誰かと繋がりたくて広大な海を渡ろうとする人に捧げるのが新しい辞書です』

 

【新居にて 煤逃げ要らず 海を見る】

 

🔘施設の庭、画像検索では菊科のオステオスペルマと思われるが。この寒い時期蜂が蜜を集めに来ていた。