ガレー船とゲラ

日経新聞日曜版の文化蘭に掲載されている歌人情報科学者でもある坂井修一氏のコラム〈うたごころは科学する〉に「ガレー船とゲラ」と題した面白いエッセイが載っている。
(処で念のために : ゲラとは大阪人の言う笑い上戸のゲラの事ではありません)

最初に澤村斉美(さわむらまさみ)さんの短歌
ガレー船とゲラの語源はgalleryとぞ
波の上なる労働を思ふ』

澤村斉美さんのことは今まで全く知らなかったが、ネットで調べて見ると歌人毎日新聞社校閲(文章の内容について事実確認する)記者で入社された経歴とのことで、この歌の背景がよく分かった。

エッセイでは「ゲラとは校正刷りのこと。~ゲラの呼称は、箱の中に組み上がった活字の列がガレー船の漕ぎ手の並んだ姿に似ているところからくるそうだ。~校閲の仕事をしながら大昔の海に浮かぶガレー船を思い出している。~このふしぎなつながりは、はるかな時空を超えて労働の意味を問い直しているようだ。~~~」とある。

ガレー船は帆船の時代に、風の少ない地中海などで漕ぎ手を使い、風に頼らず航行し戦闘などの際のスピードアップをも可能とした船で映画「ベン・ハー」で主人公が奴隷の漕ぎ手として送り込まれるあの船である。

映画では奴隷の漕ぎ手であったが、漕ぎ手が戦士を兼ねて重量を軽減し、戦闘場面ではオールを剣に持ち変えるケースも多かったようである。

言葉や文字、文章などは海を比喩(ひゆ)に使うケースが多くある。
・作家・高田宏さんが日本ではじめての近代的国語辞書「言海」を独力で作った大槻文彦を描いた「言葉の海へ」。
・作家・三浦しをんさんが辞書編集者を描いた「舟を編む」は「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」から取った題名。
等はその典型といえるかもしれない。

語源をたどると意外な組み合わせが現れる。
言葉や文字の多量で多様な姿は海がピッタリ来るのだろう。その海の上を文章を扱う人々の舟が往き来している。

このブログもカヌー程度の小舟ながらその海の上をウロウロしているひとつに数えて貰えると嬉しい。

◎赤と白のニチニチソウ
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