ヤマモモの話

一年前に神戸の西・垂水に越してきて周辺を歩き、色々なところでヤマモモ(山桃・楊梅)の樹を見かけ大半が鳥の餌や無駄に熟して落ちているのを見てもったいないと思い、来年は必ず手の届く樹を見つけ採って食べてみようと思っていた。

今年春、健康公園の歩径路から外れたところにヤマモモらしい樹を見つけ時折観察していたところ、特徴のある実を付け始め、ここにきて小鳥がついばみに来る姿を見かけるようになりだいぶ熟してきた。

ヤマモモは私の子供時代、野山のものを採って食べるという意味で一番味の記憶が残っているもので、甘酸っぱい独特の味が頭の隅で早く採って食べろと急かしているような気がした。

ヤマモモの旬は短いことが分かっているので、小鳥に食べられるよりはと思い少し早いがと思いつつ焦がした色の熟したものだけ少し採ってきた。

インターネットをみると食べても害はないがヤマモモには小さな虫が寄生しており一旦塩水に浸けることとあり、その通りにすると長さ1~2mmの白い虫が10個に2~3個の割合で浮き上がってきた。

それを真水で洗い流し食べてみたところ確かに昔の記憶に有ったような独特の酸っぱい感じが甦ってきたが、残念ながら頭の隅に有った美味しいイメージにはたどり着くことができなかった。

子供時代の記憶は美化されて沈殿していくのか、それとも樹によって違いがあるのか分からないが、それはそうとして約60年の時を隔て思っていたことのひとつが叶ったような妙な達成感がある。

それにしてもヤマモモに寄生する虫がいることは初めて知ったが、子供時代は知らずに虫ごと大量に食べていたことになる。

 

【ふるさとがやまもも粒に見え隠れ】

 

【やまももはザラメまぶしの焦がし色】