中断中のひとりごと「令和の廃藩置県」

月刊誌・文藝春秋には「ローマ人の物語」などの作品で知られるイタリア在住の作家・塩野七生さんの「日本人へ」と題するエッセイが毎号載せられている。

三月号は「令和の廃藩置県」と題するもので、早とちりの私は、地方の衰退が頭に有る関係からか、いわゆる道州制や地方創生に関するものだろうと思い読み始めたが、日本の現状の閉塞感に関わることには変わりがないが別の角度からの提言であった。

その前提になっているのが、今の日本の実情、"諸々の事件が複雑に入り交じり互いに交錯しているなかで、停滞感や閉塞感に悩んでいる状況"が日本の歴史のなかで幕末から維新にかけての一時期と似ているという認識である。

当時廃藩置県を主導した一人・大久保利通の日記にある「今日のままにして瓦解せんよりは、むしろ大英断に出て瓦解いたしたらんに如ず」を引き廃藩置県に匹敵する改革を断行すべきとの考えである。

不公平感が原因の社会の分裂が国の衰退につながるという歴史観から、廃藩置県で失業した武士をサラリーマン正規社員になぞらえ正規と非正規の垣根を一掃して閉塞感を打破しようという提言である。

ユニークなのは皆を正規社員にという常識的なものではなく、全員5年契約の契約社員にすべきというもので、人間にはある程度の安定が必要との考えで1年を否定している。

私も現役時代、本来正規社員と契約社員の違いは出来れば無いほうが良いと考えた口だが、自ら確認した事として、自由な働き方がいいという理由で契約社員を希望した一部の人がいたこともまた事実であった。

維新当時、廃藩置県で武士の身分を失った不平士族の反乱が、佐賀、熊本(神風連の乱)、秋月、萩、鹿児島(西南戦争)などで頻発したように、この案が実行された場合既得権層の不満が出て来ることは間違いないが、社会の一体感が今以上になることも間違いないように思われる。

何れにせよ今の日本には「蛮勇」と言われるような変革が必要なことは共通認識のようである。

🔘今日の一句

 

街なかで早咲き辛夷農事告げ

 

🔘施設の庭にヒヤシンスが咲き始めた。