「時をめぐる絶景旅 Jポップ作詞家が行く絶景おくのほそ道」

「時をめぐる絶景旅 Jポップ作詞家が行く絶景おくのほそ道」というNHKBSプレミアムで放送された番組を「おくのほそ道」という題に牽かれて録画して観終えた。

このJポップ作詞家というのが児玉雨子(あめこ)という女性でJポップの歌手やグループに沢山の詞を提供しているとのことで、小説分野でも芥川賞の候補にもなったことがあるらしいが、残念ながら世代が違い今まで全く知らなかった。

児玉さんは今どきの言葉に文学的表現を融合させるなかで、松尾芭蕉に影響を受けたと言われ、芭蕉がたどった「おくのほそ道」のうち、最も興味があるという岩手、山形を芭蕉と同じ季節に歩いてたどり、その土地の絶景と名句を鑑賞していく。

この各地の絶景を写し出すのがタイムラプス映像というもので、一定の間隔で撮影した静止画をつないで動画に仕上げ、変化をより強く感じられるように随所で効果的に使われている。

後で出てくる最上川に陽が沈む情景では、熱い太陽からジューという音が聴こえて来そうなという児玉さんの言葉にあった通り、時空を越えて臨場感が迫ってくる映像になっていた。

番組で紹介され各地で詠まれた「おくのほそ道」の代表的俳句、

・平泉

夏草や兵(つわもの)どもの夢の跡

五月雨の降残してや光堂(ひかりどう)

山刀伐峠(なたぎりとうげ)

蚤虱馬の尿(ばり)する枕元

・尾花沢

まゆはきを俤にして紅の花

涼しさを我宿にしてねまる也

(ねまるとは尾花沢周辺の方言でくつろぐという意味らしい)

立石寺(りゅうしゃくじ)

閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声

最上川

五月雨をあつめてはやし最上川

出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)

雲の峯幾つ崩れて月の山

酒田市

暑き日を海に入れたり最上川

・最後の締めくくり

荒海や佐渡によこたふ天河

🔘芭蕉の求めたもののひとつが「不易流行」伝統を重んじつつ新しいものを積極的に取り入れることにあることはよく知られているが、Jポップの作詞家で若い人、すなわち時代の先端を走っているような人がこの事に共感し時代を超えて創作の糧にしようとする姿勢になるほどと思うものがある。

🔘紹介された俳句のなかで初めて出合う句もあり勉強になったが、写生と感性、表現力などはとても常人の及ぶところではないとも思ってしまった。やはり実際に長い道のりを一歩一歩歩くということが大切なひとつなのかも知れない。

一番好きな句は     夏草や兵どもの夢の跡

🔘良いものをみせて貰った余韻が残る番組である。

 

🔘一日一句

 

派手柄の男日傘は顔隠す

 

🔘施設の庭、ノウゼンカズラと思われる。