「人生がラクになる数学のお話43」

柳谷晃著 「人生がラクになる数学のお話43」文芸社刊 を読み終えた。

数学者である著者は、我々が生きている世界で自然現象などの偶然の事象によって引き起こされる被害や恵みに対し、その恵みを最大限に享受し被害を最小限にするための道具が数学や物理であると定義している。

身近な事柄43の切り口をもとに、数学的な考えでその起こっている偶然の事象にどのように対処をすればその偶然を有利に使うことが出来るかを説明し、そのような対処の仕方が、結果的にバランスの良い人生、更には社会的なバランスを取ることにも有効であると説明している。

43の切り口の内私が最も興味があり納得したのがNo21の「金融工学は未来を予測出来るか」でありその要旨は、

デリバティブという金融商品がありもともと為替などのリスクを最小限にするために作られていたが、これを運用する際この時はこうすれば良いという運用の理論的根拠を与えたのが、ブラック、ショールズ、マートンの三人がとなえたものでノーベル経済学賞を受賞した。

ここで金融に関わる人々が大きな誤りを犯す。この数学的モデルは未来を予測することにより少しでもリスクを少なくすることに意味があるが、どこかでこのモデルで大きな儲けを出そうという発想に変わってしまった。

出来るだけ損を引き起こさないことでは成功しても儲けようとするとリスク計算が甘くなり突発的現象も織り込めず結果的に金融危機の引き金を引いた。

今でも有名な理論を売り物にした金融商品は散見されるが、この事例は例え立派な数学的な理論であってもその用い方によっては人を不幸にしてしまうことを示しており、理論的と言われるものに惑わされることなくその理論の適用される範囲や条件を自分の頭で冷静に考えることの大切さを教えているような気がしている。

 

【散髪で身も軽き春書を読まん】

 

🔘路傍に咲いているカラスノエンドウ