「鉄砲とその時代」

三鬼清一郎著「鉄砲とその時代」吉川弘文館 刊を読み終えた。題名から見ると鉄砲伝来からその活用や影響などについての研究書と思われ私もそのつもりで図書館から借り出した。

実際は鉄砲やキリスト教の伝来が社会に大きな影響を与えた時代すなわち、織田信長足利義昭を擁して上洛する永禄11年(1568)から豊臣秀吉の死後、関ヶ原の戦い徳川家康の覇権が確立する慶長5年(1600)までの間、一般に安土桃山時代または専門的に織豊(しょくほう)政権の時代を史料をもとに読み解いたものである。

著者は波乱に富んで生き生きとしたこの時代の通史を書くに当たり次の5つの切り口に分けて時代の特質に迫ろうとしている。

キリシタンの世紀~鉄砲とキリスト教に代表される南蛮世界の影響。

・信長・秀吉と天皇~権力者と天皇との関わり、どのように利用したか。

織豊政権下の武将像~色々な履歴を持つ武将や大名像と各々の政権との関わり方

・民衆から見た時代の様相~日本各地の史料に残る百姓、漁師、商人、職人の実態と生きざま

・文化の伝統と断絶~絵画やキリシタンを含む宗教と権力者や民衆の動向

これらの内私にとって一番興味深かったのは「民衆から見た時代の様相」という章である。

今「厚狭毛利家代官所日記」という江戸時代の史料を読み進めているがここに記載されている例えば百姓への年貢取り立ての仕組み、漁師村に対する統制や年貢の付加など重なる部分があり、江戸時代の民衆統制の仕組みはこの安土桃山時代にさかのぼることが良く理解出来た気がしている。

表題選びで間違ってしまったがそのお陰で良い本に巡り合った気がしている。

 

【遠足の夢は遥かに故郷の野】

 

🔘垂水の図書館前でバス待ちの時間に撮ったもの、ツツジの仲間と思われる。