映画「杉原千畝 スギハラチウネ」

住んでいる施設の映画会で2015年に製作された日本映画「杉原千畝 スギハラチウネ」を観ることになった。

云わずと知れた第二次大戦の渦中でリトアニア(バルト三国の一つ)領事の職に在る時、ナチスドイツの迫害を逃れるユダヤ人に、後に「命のビザ」と呼ばれる事になるビザを独断で発行して、多数の命を救った外交官・杉原千畝の物語である。

杉原千畝役を唐沢寿明さん、その妻を小雪さんということでここまでは全く違和感がないが、監督がチェリン・グラックと初めての名前、米国人だが日本生れで日米合作や国際製作の映画を手掛けて来た実績があるらしく、外国人出演者が多数のこの映画でその手腕を充分発揮しているように思われる。

当時のヨーロッパ情勢、ドイツとソ連によるポーランド分割や東欧バルト海沿岸諸国への侵略、独ソ戦による被害などを描いている箇所では、どうしても現在のウクライナ情勢が頭をよぎり、現在に至る東欧諸国やバルト海北欧諸国からロシアへの視点を思い起こさずには居られない。

私は現役時代仕事でイスラエルを訪問し、当然ながらユダヤ人の人々と接したこともあって、この映画のユダヤ人が受ける迫害の場面ではつい身につまされて涙が出てしまった。

杉原千畝を理解しない上司でドイツ大使・大島浩を演じたのは小日向文世さんだが、大島大使は陸軍出身でナチスドイツ・ヒットラーの信奉者として有名で、日・独・伊三国同盟を主導し戦後戦犯として終身刑となった。

杉原千畝は本国の意向に反して2139通のビザを発行してユダヤ人の命を救ったとされるが、組織のなかで仕事をしていると組織の意向と自分の信念とが衝突する場面が必ず何度かあることを思わずにはいられない。

杉原千畝の「命のビザ」はその極限の対応事例のひとつを示しているが、例え極限ではなくとも、誰もが類似の場面で向き合わなければいけない課題でもあることを考えさせてくれる映画である。

 

【春霜や椅子の白きに文字の跡】

 

🔘須磨離宮公園で見かけた初めて見る花、画像検索ではクリスマスローズのようだがこの花は横向きに咲く性質があるらしい。

横から撮影した