角川地名大辞典・山口県①地名のアクセント

日本の地名辞典のなかでも角川書店が昭和53年から順次発行した「日本地名大辞典」は都道府県毎に一冊、全47冊に及ぶもので私も殆んど揃えていたが、引っ越しで処分して山口県のものだけ残して置いた。

今考えると兵庫県の分も残して置いた方が良かったかと思えるが、例えば山口県版だけで1470ページに及ぶ大部でありなかなかそうもいかない。

今回調べたいことがありその山口県の分を開いていくと今まで忘れていた発行時の月報が目に留まり、そこにいくつかのとても興味あることが書かれていることが分かった。

その一つが「地名アクセントへの侵蝕」と題する山口県下関市出身の直木賞作家・古川薫さんの文章。

古川さんは山陽本線の電車で移動中に厚東(ことう・宇部市)駅の近くで、乗客が車掌のアナウンスに対しアクセントが違うと申し入れたのを目撃している。

車掌は「とう」と言うふうに「こ」にアクセントを置いてアナウンスしたが、これに地元の方言地名の研究者らしき人が「ことう」にはアクセントがないと伝え、車掌がきょとんとしている顛末である。

古川さんはこの月報が発行された当時昭和63年(1988)頃、山口県内の地名でアクセントが間違って発音されているいくつかの内、例として萩を挙げ何百年にもわたり発音されたきた「はぎ」の発音が、マスコミなどの影響を受け「ぎ」となりつつあることを嘆かれ、この要因の一つとして山口県民の中央志向の強いことを挙げられている。

中央志向はともかくこの萩・はぎの件は私も同感で、半世紀前山口県で聴いていた発音と今あちこちで聴く発音は違う。

一音節目にアクセントを置いて発音するのは東京方面の人々であると解説されている。

また更に伝統的な地名の発音を訛りと誤解する向きにも警鐘を鳴らしている。

これらには私も別の思い当たるふしがある。私の故郷の山口県厚狭の発音だが半世紀前 、アクセントがないかどちらかと言えば「あ」であった。

しかし最近少しずつ朝や浅に近い「さ」というアクセントに近付きつつあるような気がしてならない。

来年春頃帰郷の折りにじっくりと若い人の発音を聴き込んで来ようと思っている。

 

【故郷の 地名あれこれ 思う冬】

 

🔘介護棟の庭シリーズ、画像検索からリナリアの仲間のように思える。