「鎌倉殿の13人」北条政子の名演説と時代考証

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では後鳥羽上皇が執権・北条義時追討の院宣(いんぜん)を下し、朝廷と鎌倉幕府が対決する「承久(じょうきゅう)の乱」の始まりを告げる状況にさしかかっている。

動揺する鎌倉の御家人一同を結束させ、史上初めて東国武士団が西国武士が支える朝廷・官軍を撃ち破る画期の端緒となった北条政子の名演説が繰り広げられた。

女性でもこれだけの指導力を発揮できる歴史上の例として以前からこの演説には注目していた。

小池栄子さんの演技力は素晴らしくあの大きな目で圧倒されたが、そのドラマの演説内容で大きく史実と違う点が一つだけある。

この大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の時代考証を担当しているのは歴史家・坂井孝一氏だが坂井氏は日本中世史の専門家で「承久の乱・真の武者の世を告げる大乱」中公新書刊 という素晴らしい著書がある。

この中で著者は鎌倉幕府の歴史書吾妻鏡(あずまかがみ)」と軍記物語の「承久記・慈光寺本」を元に政子の演説を再現しているが、この史実とドラマでの演説の決定的な違いは

・ドラマでは『院宣北条義時を討てとの下命であるが義時は私心無く鎌倉に尽くしたもので、これに従えば東国鎌倉は西国の下風に立たされる』ということがベースになっている。

・史実の方では『院宣は三代にわたる将軍の遺産「鎌倉」すなわち幕府に対する攻撃であり、遺産を守って恩に報うことで自らの既得権を守れ』ということを基本にしている。すなわち御家人達の矛先が義時個人に向かうのを恐れ院宣のターゲットを巧妙にすり替えているところが肝である。

ドラマでは終始北条義時と政子が主人公であり、この筋書きを壊したくない原作者・三谷幸喜さんの意図が、ドラマの時代考証担当の歴史家の導いた事実を超えているわけである。

私の個人的な意見だが大河ドラマには功罪の二面がある

・功の方は視聴者に歴史への興味を誘うことが出来ること。

・罪の方は視聴者にドラマの内容と事実とを混同させてしまう恐れがあること。

 

【休館日 知って仰ぐや 冬の天(そら)】

 

🔘介護棟の庭シリーズ、画像検索から見るとネメシアの仲間と思われる。