「実録アヘン戦争」

中国を統治していた清(しん)とイギリスが1840年に戦ったアヘン戦争は当時の日本にとって衝撃的な出来事で、眠れる獅子と言われた大国・清がいわゆる夷狄(いてき)に完敗して領土と賠償金を取られたという事実は、日本全体の危機意識を呼び覚まし結果的にこれが明治維新に繋がったとも云える。

実際、私の郷里長州藩攘夷論を牽引した松下村塾系の人々の議論の原点は、このアヘン戦争から来るいわば「西からの衝撃」と言えるものであった。

今までその重要性は知りつつも「イギリスによるアヘン貿易強行のための侵略戦争」と言った程度の知識であったが、今回 陳舜臣著「実録アヘン戦争中公新書刊 を読み終えたことで、当時長州藩や日本全国の人々が感じた危機感がより深く理解出来るようになった気がしている。

陳舜臣さんは台湾出身で司馬遼太郎さんとも親しい小説家で小説「阿片戦争」も書かれている。

陳さんはこの3000枚に及ぶ長編小説で全てを書き尽くしたとも思わず、今度は実録のかたちでとりあげて見る気になったとこの本のまえがきに書かれている。

実際、当時の清に於ける銀(銀本位制)の国外流出から来る物価高騰と民衆の疲弊、アヘンへの逃避、清朝内部の腐敗、イギリスの横暴などこの実態を知るほど著者が多くの人にこの事を知って欲しいと義憤にかられたであろうことは充分想像される。

私もこの本を読んで現在の香港問題にも繋がる歴史をより深く知り、当時の西洋列強の凄まじい帝国主義的な行動を再認識すると共に、日本は幕末から明治維新に至る間よくぞこの危機を乗り越えてくれたものだと郷土も含む先人に感謝したくなった。

この戦争にイギリスが軍を派遣するに当たりイギリス国会でこれは「不義の戦い」だとして反対演説があったことが記されており、結果的に「不義の戦い」に軍が派遣されたものの全編を通じての少しの救いでもある。

🔘毎朝歩く公園は桜並木があり春はさぞかし美しいのだろうと想像されるが、今の季節桜の木も緑から緋や黄色に模様が変わり、花とはまた違った美しさを感じる。

【桜木も  秋色染まり  花を待つ】

昨日撮影した桜並木