映画「柘榴坂(ざくろざか)の仇討」

井伊家・彦根藩と言えば初代藩主・井伊直政以来徳川幕府の譜代名門で、戦の折は先鋒大将が決まり、政治の場では非常時の大権を行使する大老職を出した。

家康が近江国(おうみのくに・滋賀県)彦根、すなわち石田三成の居城・佐和山近くに井伊家を配したのは、朝廷のある京をにらんだ上で西国大名への抑えであった。

幕末の井伊家当主・直弼(なおすけ)が幕府大老に就任し、朝廷の許しも得ず開国に踏み切り、反対派を弾圧した「安政の大獄」は有名で我が郷土の吉田松陰先生もこのとき犠牲になった。

その大老井伊直弼が水戸浪士に襲われた「桜田門外の変」は幕府の威信失墜を決定付けた有名な事件だが、武家の名門井伊家の当主が護衛も付いていながら殺されるという前代未聞の事件は、余り表には出てこないが井伊家内部でも相当な犠牲者や処分があったはずである。

民放BSで放送された映画「柘榴坂の仇討」はその桜田門外で井伊直弼の護衛役で生き残った侍(中井貴一)と襲撃した水戸浪士の生き残りの侍(阿部寛)の物語で、原作が作家・浅田次郎さん。

護衛役の侍は切腹も許されず、浪士の一人を見つけて主君の仇討を厳命され、家族共々過酷な運命を生きることになる。

一方の水戸浪士の方も死ぬこともままならず、二人は明治になって仇討禁止令が出された直後、江戸から東京へ変わった「柘榴坂」で対決することになるが、浅田次郎さん作品特有の救いのある結末が待ち受けていることになる。

歴史上の大事件の裏にある目に見えにくい普通の人の運命の転変を描いていて、何時の世でもこういう不条理と救いがあるのだなと考える余韻を残すような映画であった。

🔘いつも歩く健康公園ではだいぶ赤や黄色の割合が増えてきたような気がする。これはアメリカフウ(アメリカ楓)、楓(かえで)の仲間らしい。

 

【やあ 楓   緑脱ぎ捨て  どう生きる】

【楓の葉   生きる術(すべ)なる   色変わり】

【異国より 来し楓あり ここで立つ】