「IT開発で失敗は不可避」

日経新聞で久しぶりにグサリと胸に刺さった記事に出会った。
経済教室という紙面に「私見卓見」というコラムがあり主に経済人などが色々な意見を投稿されている。

今回「IT開発で失敗は不可避」との意見を出されたのは圓窓代表取締役という肩書きの澤 円という方で検索してみると日本マイクロソフトの役員の経歴もあるとのことであった。

その骨子は
・ITの開発で失敗は不可避で、この事実をいかに許容するかが重要だが日本ではこの考え方が浸透しない。

・製造業の人が「10年壊れないものを作っている、なぜITでは出来ないのか?」と言っているがそうした考えの人が多いから日本はIT後進国になった。

・それは失敗を許容しない体質、「英語が話せるようになってから留学しよう」という思考にあり最も重要な時間が無駄になる。

・準備が整ってから始めると、ともすれば時代遅れや競争相手がすでに市場で圧倒的なシェアを握っていたりする。

・米国資本の会社を出て日本企業と仕事をすると「もったいない」と思うことが多い。間違いなく潜在能力はありとにかく挑戦することが大切で、これを邪魔するマネジメントを排除すべきである。

🔘これは私や私たちの世代で製造業に携わって来た者への痛烈なカウンターパンチのような気がする。
多少の反発はあるものの大筋で納得する部分もある。

長年家電製品の業務に従事し、途中から家電にもソフトプログラムが入るのが当たり前になったがその際、ソフトウェアには必ず一定のバグ(虫・欠陥)があることを聞き、なかなか納得できなかった覚えがある。

業務に従事している間、製品の信頼性で中国や韓国製品に負けているような事は全く無かったが、確かに開発スピードは徐々に差が開いたような気がして、その要因のひとつがここに書かれているような「割り切り」マネジメントの違いにあったと思われる。

どうしても過去の失敗に囚われ安全性や信頼性を最優先に完璧さを追求しがちだが、国際競争のなかでどう折り合いをつけていくかが重要なことを教えられたような気がしている。

ただITにミスは不可避といっても、人命に関わることや、「みずほ」のような大規模障害は絶対に起こしてはならず、この折り合いをつけることは避けて通れない。

何れにせよ我々の世代が完全に身を引き老害が無くなったあとに、ようやく日本が挽回の再スタートを切れる機会が来るのかもしれない。

【 夏くもり 海が空へと 昇りゆく】

🔘施設の庭シリーズ、ひっそりと。