「三屋清左衛門残日録」

「三屋清左衛門残日録」は作家・藤沢周平の代表作のひとつである。
私たちの時代、歴史、時代小説の分野での双璧と云えば司馬遼太郎藤沢周平であった。

双璧と云ってもその作風スタイルは全く違い、司馬さんは物事を大きく俯瞰して時代を動かすような立場から物語が作られる。
一方藤沢さんは二三の例外を除きあまり英雄豪傑には関心がなく例え武家の話であってもその物語りは実際の生活や時々の感情、が中心でそれぞれの生き方が季節や自然の中で描かれる。

「三屋清左衛門残日録」は藩の要職にあった清左衛門が隠居をして後の出来事を日記風に綴ったもので、旧友との交流、藩の御家騒動や派閥抗争のあおり、行きつけの小料理屋での料理や出会い、息子やその嫁とのやりとりなどが等身大で織り成され、まさに藤沢周平さんの志向が凝縮されたような作品である。

私はこのブログを引っ越し後の神戸で再開するに当たり、この作品から勝手に採らせてもらい「神戸残日録」としたことは前にも書いたことがある。

その物語が民放のBSで2時間のスペシャルドラマとして4回計8時間の大作で放送された。
普段はあまり見ない時代劇だが今回は例外で全て録画した。

主演の清左衛門役が北大路欣也さん、親友の町奉行役が伊東四朗さんでこれがはまり役、一番ビックリが、清左衛門が通った剣術道場の主になった栗塚 旭さん、 とても懐かしい名前で半世紀前のTVドラマ「燃えよ剣」「新撰組血風録」で土方歳三を演じて局長・近藤勇に向けた「近藤さん」という定番の台詞が印象的だった。

ドラマのなかで折に触れ子供時代や若い日の想い出が出たり、剣術や学問を学び直すなど現代のリタイア組と本質は全く変わらない隠居生活の描写であり、それが故に藤沢周平さんの作品が読み継がれるのだろう。

私も気に入っている作品のなかで繰り返される以下のフレーズはリタイア組にとって同感とする人が多いに違いない。

【日残りて 昏(く)るゝに 未だ遠し】

🔘最近毎朝トンビが上空を舞う、どうも近くの林に巣があるような気がする。