同郷の詩人・中原中也 のことなど

NHKTVの朝ドラ「ちむどんどん」では主人公暢子と恋人・和彦が紆余曲折を経て結婚へ向けて動き始めたが、最大の障害になっているのが鈴木保奈美さんが演じる和彦の母親で、恐そうな顔で中原中也の詩集を持って現れた。

和彦と母親が共に中原中也の詩を読んでお互いを理解しようとする場面も出てきた。
中原中也は私と同じ山口県の生まれ、現在の山口市湯田温泉が生地で、昭和12年(1937)30歳で結核性脳膜炎により死亡した。

身びいきかもしれないが、山口県(周防、長門)は何か特別な詩才を発揮する土壌があるような気がしている。例えば
吉田松陰
【身はたとひ武蔵(むさし)の野辺に朽(く)ちぬとも留め置かまし大和魂(やまとだましい)】

乃木希典
【山川草木 転(うたた)荒涼 十里風腥(なまぐさ)し 新戦場 征馬前(すす)まず 人語らず 金州城外 斜陽に立つ】

種田山頭火
【うしろすがたのしぐれてゆくか】

金子みすゞ
【朝焼け小焼だ、 大漁だ 大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ、浜は祭りの ようだけど、海のなかでは 何万の、鰮(いわし)のとむらい するだろう】

和歌、漢詩、俳句、童謡詩、分野は違うが何れも個性的で前例にとらわれていない独創性を感じる。

朝ドラに刺激され図書館で「中原中也詩集」思潮社 刊を借りて読み直してみた。
全部で112の詩が収録されているが、正直なところ私が理解できたのはおよそ3分の1残りの3分の2は私の手に負えない。

しかし理解できるものの存在感は素晴らしく、先に書いた人々と同じ系譜の独創的な詩才を充分感じさせる。

読み進めると、この本の巻末に解説として詩人で評論家でもある鮎川信夫氏が実に面白いことを書かれている。

中原中也の詩集を読んだ人なら誰でも気がつくはずだが、どんなバカにでもわかる詩がある反面、どんなに怜悧な人でも解くことが出来ない詩がある。ーーーーーーーー論ずるとなると一筋縄ではいかないのが中原中也の詩である」
~~バカか怜悧か分からないが正に同感!!

「ちむどんどん」に出てきた中也の詩「修羅街輓歌(しゅらがいばんか)」の一節

【それよかなしきわが心
いはれもなくて拳(こぶし)する
誰をか責むることかある?
せつなきことのかぎりなり。】ーーー

誰にもこういう心持ちが一度や二度は有るに違いない。

🔘健康公園でタンポポは意外に息長く花が咲き続けている。

【吾れに似て 細きタンポポ 風にゆれ】