「鯨獲りの海」

最近好物の鯨赤身の刺身を食べていない。尾ビレの部分オバイケは酢味噌で食べたが、やはり鯨は赤身のところを酢と醤油で刺身を食べるのが一番のような気がする。

家内がスーパーに買い物に行くおり時々運転手に駆り出され、待ち時間に鯨がないか売り場をのぞくことがあるが最近お目にかかったことがない。

私の生まれた山口県厚狭の町は捕鯨基地・下関の隣に位置し、船団を組んで南氷洋(なんぴょうよう)で捕った鯨肉は常に身近な食べ物だった。

日本は2019年「国際捕鯨委員会IWC」を脱退しそれまでの調査捕鯨から商業捕鯨に転換した。個人的にはそのニュースを聞いて「これで鯨の刺身をいつでも食べられる」と思い喜んだのだが。

直近放送されたNHKがその商業捕鯨の現場を撮影したドキュメンタリー「鯨獲りの海」を観てそれが私のぬか喜びである実態がよく分かった。

商業捕鯨といっても実際は国際的な視線を意識して操業は日本の排他的経済水域内に限られ、捕獲数も自己規制され2022年度で各種鯨併せて514頭、番組内の説明では今から60年前、戦後の食糧難の救世主であった最盛期に比べると100分の1にしかならないらしい。

現在の捕鯨も昔ニュース映画で観た捕鯨と同じく鯨を見つけ仕留める船(昔はキャッチャーボートと呼んでいた)と獲った鯨を解体処理する母船とで船団を組んでおり、それが今も下関を出航しているのを目の当たりにして感動、鳥肌が自然にたってしまった。

以前ほど捕鯨の役割は減ったものの使命感を持って伝統を何とか支えようと奮闘する乗組員の姿には感謝の気持ちが湧いてくる。

出港後5ヶ月以上帰れないなかで乗組員が子供の夢を見るという話には私も海外単身赴任の経験から身につまされるものがある。
また鯨獲りの世界では昔から「子供の鯨と一緒の2頭連れの鯨は獲らない」という話は、以前長州藩日本海側で行われていた古式捕鯨でも聞いた覚えがあり、脈々と続く資源保全のならわしとして感じるところがある。

乗組員の一人が「捕鯨は一度止めてしまうと次には技術が途絶えなかなか再開出来なくなる、だから続けるために頑張ると」話して居られたのが印象に残った。

今度鯨を食べるときはきっとこの番組を思い返すことになるだろう。

🔘健康公園樹木シリーズ・ヒメユズリハ