映画「蝉しぐれ」と作家・藤沢周平

民放BSで放送された2005年の映画「蝉しぐれ」を録画して観終えた。
蝉しぐれ」は云うまでもなく作家・藤沢周平さんの原作で、映画の冒頭 「藤沢周平氏に捧ぐ」との字幕が流れた。

たそがれ清兵衛」など藤沢作品を多く撮った山田洋次監督の弟子とも云うべき黒土三男さんがこの映画の監督で、この映画制作の以前に放送されたNHKTV時代劇「蝉しぐれ」でも脚本を担当されていた記憶があり、云わば2回目の登板になっている。

この映画では主役の「牧文四郎」が10代目松本幸四郎さん、初恋の相手「ふく」は木村佳乃さん主演となっている。
ネタバレになりそうなので詳しくは避けるが、藩内の抗争で父を失った文四郎と、図らずも藩主の側室として跡継ぎを生んだふくとの関係を横糸に、友情や藩内抗争、父親の名誉回復などを縦糸に織り込み藤沢周平さんらしい物語が進行する。

幼い日の文四郎が一人で父の亡骸を荷車で連れ帰る苦しい坂道で、蝉しぐれが鳴り響くところに只一人これも幼いふくが荷車を押して助けるシーンは、題名の由来でもあると思うが何度観ても恥ずかしながら涙が出てくる。

文四郎とふくの生涯最初で最後の逢瀬の場面もついつい感動してしまった。

この映画を観た直後たまたまNHKTVで「新日本風土記・山形 庄内」が放送された。
藤沢さんは山形県日本海庄内地方の鶴岡出身で、数々の時代小説の舞台として使われる「海坂藩(うなさかはん)」は故郷の庄内・鶴岡を想定したものと云われる、
当然、「蝉しぐれ」も海坂藩が舞台である。

私も藤沢周平さんの作品は数多く読んできたが最も記憶に残るのは「三屋清左衛門残日録」「密謀」「たそがれ清兵衛」などだろうか。

新日本風土記では庄内地方の冬の厳しい自然、庄内米をはじめとする懐かしくおいしい味と併せ、人々が藤沢周平に寄せる深い共感と尊敬が随処に感じられ「藤沢少年を作ったふるさと」と心に残るナレーションがあった

藤沢周平さんと司馬遼太郎さんは同じ時代小説でも明らかに作風が全く違い、藤沢さんは下方や中ほどから物事を深く見つめ、司馬さんは上方から俯瞰(ふかん)することを得意としているように感じられ、どちらも特徴的で素晴らしい。

◎これはキバナカタバミの仲間のような気がする。
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