映画「あん」

民放BSで放送された河瀨直美監督の映画「あん」を録画再生して観終わることが出来た。
この映画を観るのは多分2度目と思うが途中全くその事を忘れ最後まで集中したような気がする。

ハンセン病を扱った映画に、松本清張原作を野村芳太郎監督で加藤剛さん等が主演した「砂の器」があり徹底した陰のイメージが残っているが、この映画は過酷な運命に対しても決してひるんでいない陽のイメージを私に残してくれたような気がしている。

しかしこういった不治の病のようなことに当事者としてまた周囲の人として直面した場合、どういう行動をとるであろうか、とらざるを得ないのか、どうあるべきか等ついつい考えさせられた事も事実である。

主人公を演じるのがこの映画が最後の出演作となった樹木希林さんで、この時既に癌を患って治療中だと思うが、樹木希林さんがいなければ成り立たなかったと思われる程その存在感は際立っており、ともすればより暗くなり勝ちの状況のなかで彼女の存在がその場所を明るく保っているような感じがある。

「あん」とはどら焼きの小豆つぶ餡のことで、そのどら焼き屋さんの常連の中学生役が内田伽羅(きゃら)さんという名前で字幕に出てきた。
前に観たときは余り気にしなかったが内田という名に少し引っ掛かり後で調べてみると何と樹木希林さんのお孫さんであることが分かった。

主人公を理解する重要な役回りを、しっかり日常のごとく演じてとても将来性を感じる印象を受けた。

更に樹木希林さんの相手役として重要な、どら焼き屋の雇われ店長永瀬正敏さん、今までの出演作では「息子」「隠し剣鬼の爪」などが印象深いが、この映画でも過去を抱えながら現在を真面目に生きようとする青年を演じて、この映画や樹木希林さんの良さを引き出させた役回りだった気がしている。

樹木希林さんが小豆を仕込んであんを作る様は現在の連続TV小説「カムカムエヴリバディ」で主人公の安子が小豆あんを作る姿に重なって見えたのは私だけだろうか?

店長永瀬正敏さんと中学生内田伽羅さんが樹木希林さんの居る療養所を訪ねる場面は観ている私も緊張したが、2度目の訪問で希林さんの死を知ることになり、そこで希林さんが二人に遺したメッセージ。

『私達はこの世を見るため聞くため生まれてきた。~~~何かになれなくても生きる意味があるのよ』

はこの映画の全てを代表する言葉になり、永瀬さんと内田さんの再出発に繋がっている。

河瀨直美監督の実力も充分に理解出来た。

◎昨日の夕方自衛隊の駐屯地そばを歩いているとヘリコプターが帰投してきた。
f:id:kfujiiasa:20220119154615j:plain
f:id:kfujiiasa:20220119154646j:plain
着陸直前、奥に見えるのが二上山(にじょうざん)
f:id:kfujiiasa:20220119154756j:plain