二刀流アレコレ

去年は大リーグの大谷翔平選手の2刀流が日本中を席巻し、コロナウイルスなどで沈滞気味な空気を振り払ってくれたような気がして今年の活躍も大いに期待される。

2刀流の形にも色々有り大谷選手のようなスポーツのなかでの2役、スポーツと他のこと、ラグビーの日本代表福岡選手は医者を目指すらしい。

私がとても羨ましく思える2刀流は理系と文系の両方をこなし一流の域に達する人である。現在でもマスコミなどに頻繁に登場して、情報科学者でありながら歌人でもある坂井修一さんのような人がいる。

明治人でこの2刀流を完璧にこなして名を残したのが、森鴎外寺田寅彦で2人とも夏目漱石との交流が有ったことも面白い事実と感じている。

森鴎外は今年没後100年の節目に当たるらしくマスコミの一部では特集記事が載っている。
云うまでもなく鷗外・森 林太郎は軍医としての最高位・陸軍軍医総監を勤めながら現代に至るまで文豪として称賛を浴び、高瀬舟阿部一族舞姫など多くの小説随筆を残す。

寺田寅彦夏目漱石に師事しており、伊集院静さんが漱石を描いた「ミチクサ先生」にもたびたび登場する。
「天災は忘れた頃にやってくる」で知られる一流の物理学者でありながら随筆を書き俳句を詠んだ。

蔵書の引き取りを頼んだ古本屋が残していった本の中にたまたま「寺田寅彦全集」を見つけ、その第1巻冒頭の随筆が「根岸庵を訪(おとな)う記」であり良い機会と思い再読した。

根岸庵とは正岡子規が晩年脊椎カリエスで病床に臥した東京根岸の居宅のことで、寺田寅彦漱石から子規への紹介を受け訪問する顛末を書いたものであり子規の晩年の様子がよく分かる。
ミチクサ先生でも引用されていたが、玄関に女物の下駄しか無いところを見て絶えて外出することの出来ない子規の病状を察する描写は胸に迫ってくる。

◎大谷選手のインタビューを聞いていて感じるのは野球が「大好き」と思っていることで、どんな2刀流でもそれを全う出来るのは才能だけでなく、人知れない不断の努力とそれを可能にする「それが好きだ」ということではないだろうか。

寒い朝、雀も腹が減っているらしく草むらに群がり何かをあさっている。電線の雀が順番待ちで人を警戒している。