「安いニッポン・価格が示す停滞」

中藤玲著「安いニッポン・価格が示す停滞」日経BP社 刊
を読み終えた。
著者は日本経済新聞の記者でこれまで色々な業界を担当している。
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この本は30年に渡って停滞から抜け出せず、今や衰退期とまで酷評される日本経済について、世界との価格の比較に目を向けて現状を分析し、停滞から脱却する糸口を探そうという趣旨で書かれたものと理解される。

現在為替市場では円安が進行し1ドル115円も間近に迫っているような状況で、ひと頃云われていた有事の円買いとの言葉も聞かれなくなり、円安が企業の業績を改善し景気によい影響を与えるというのは昔の話になってしまった。
残るのは円の価値の下落、国力の低下という冷厳な事実である。

私が海外で働いていた今から15~30年前の時点ではまだまだ日本の物価は相対的に高く、特に新興国と比べると商品価格や給料も大きな差が有ったような実感であり、例えば日本人の管理者一人はタイ国の工場労働者50人から100人と同程度の経費だった気がする。

然し今や世界の価格が容易に比較できるマクドナルドハンバーガー、ディズニーランドの入園料、ダイソーの均一価格などを見ると現状の為替で日本の何れもが世界の最安値になっているという事実には驚きがありため息が出る。

これはこの30年間、日本がデフレ心理の中、給料も物価も停滞し、各国の給料や物価が順調に上昇したことによって生じたものである。

この事は、
・人材獲得競争に遅れをとる、
・資源、原材料、食料などの買い負け、調達難、
・土地、技術、企業などが外国に買われ易くなる、
といった負の動向により日本の相対的な国力低下と成長力の劣化、個人所得の低迷となって現れる。

安い日本から脱けだすための処方箋も色々書かれているが
その後に続くコメントは象徴的で、
「これらは何れも目新しいわけでなく、すでに処方箋は見えている。突き詰めると結局は、おのおのがそれぞれの現場でもう一歩を踏み出せるのか、ということに行き着く。例えば終身雇用をやめて年功序列ではなく成果に応じた給与体系になることを自分たちは受け入れられるのか。ーーーーーーーー」

誰も目の前のものが安く買えることは嬉しいが、長い目で見たときそれがマイナスになって自分に跳ね返ってくることは心しておかなければならないのだろう。
「木を見て森を見ず」を警告されているような気がした。

◎朝の散歩道、街で暮らしていると落ち葉を踏んで歩く機会はなかなかないが、今朝はカシャカシャ音を立ててきた。
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我が家の庭、カルーナ ガーデンガールズという名前らしい
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