タイ・チュラロンコン王

本村凌二著「世界史の叡知・勇気、寛容、先見性の51人に学ぶ」中公新書版 を読んでいる。
古代史家の著者が、古代ローマ人が子弟の教育のために父祖の歴史を教えた史実に習い、世界史の中から51人を選んでその生涯と事績を紹介したものである。

まだ読んでいる途中ながらその一人に「チュラロンコン~近代化でタイの独立を守った名君」が取り上げられていることを知り、少し嬉しくなってしまった。
このような世界史視点でタイの人物が取り上げられることは少ない。

私は現役時代タイに駐在したが、時折この「チュラロンコン」の名前を聞くことがあった。
特にこの王の名を冠した「チュラロンコン大学」はタイでは歴史とそのレベルの高さで、誰もが認めるNo1大学で、同じ工場に勤めて通訳などにも協力してもらった友人の女性もここの出身で聡明な人だった。

1800年代から続いた帝国主義の時代、インドシナ半島は、西からインドを拠点にしたイギリスが、ビルマやマレー、シンガポールを植民地化して行き、東からフランスが、ベトナムラオスカンボジアを植民地にして進出、その間にあるタイも時間の問題と思われていた。

私も東南アジアの地図を見て不思議に思うのだが、このような地政学的位置で独立が維持されたことは奇跡に近いことと思える。

現在に続くタイ・チャクリー王朝の5代目ラーマ5世王・チュラロンコンはこの多難な時期に王位につき、近代国家の土台になる、財政、司法、徴兵、教育、郵便電信、医療等の改革を日本の明治維新にならって進め、これらを拠り所にして列国の圧力を切り抜けた。
この事からチュラロンコン王は大王の称号を受けタイの人々の尊崇を今に集めている。

現在タイでは長く続いたラーマ9世プミポン王の後を受け10世ワチラロンコン王が即位しているが、私の駐在時代からひどく噂のあった個人的資質や格差の拡大を背景にした政治的対立、世代間対立などが絡んでデモも頻発し、王政も曲がり角にきているように思われる。

どのような行く末か気になるが、ゆかりがある懐かしい国が早く安定することを願っている。

◎歩きの途中見かけたこれは図鑑を見ると紫蘭(シラン)のようだ。今までシランかった。
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