黒澤映画の面白さの秘密

NHKBS・プレミアムシネマで黒澤明監督の「椿三十郎」をリメークした角川映画森田芳光監督の同名映画「椿三十郎」が放送され、あまり気が進まなかったものの、まあいいかくらいのつもりで録画し、放送からだいぶ時間が経ってから再生して観た。

椿三十郎が織田祐二、敵役(かたきやく)が豊川悦二の配役で、黒澤映画の三船敏郎仲代達矢の存在感には及ばないものの、ストーリーに引き込まれて一気に観終えてしまった。

リメイク版の冒頭、スタッフやキャストが表示される字幕で、この映画と黒澤映画のオリジナル版との唯一の共通点が脚本にあることが分かった。
黒澤明菊島隆三小国英雄の三氏である。

監督が変わり、白黒とカラーの違いで重厚感や臨場感は少し変わったが、ストーリー展開は同じ脚本を使っているためか、
・若侍たち、三十郎、敵の一味3者の知恵比べ
・敵の一味ながら若侍に共感する善良な侍の口上
・全体がキリキリするなかで、とてもおっとりした城代家老の奥方と娘の会話
・椿の花を味方への合図に使った一騒動  
等々その面白さは全く変わらず、色褪せて無いことがよく分かった。

常日頃はその有能さを、わざと鈍重(どんじゅう)な振る舞いに隠している馬面(うまずら)の城代家老を、オリジナル版では長い顔の伊藤雄之助さんが演じていたが、リメイク版ではこれも長い顔ではひけをとらない、藤田まことさんが演じて、脚本を尊重して見せているのには思わず笑ってしまった。

この映画を観て黒澤映画の面白さの秘密の一つが脚本にあることがよく理解できた。
この機会に少し黒澤映画の脚本を振り返ると、私の好きな「隠し砦の三悪人」「蜘蛛巣城」はこの3人に橋本忍氏を加えた4氏の共同、「七人の侍」は黒澤明橋本忍小国英雄3氏の共同作品だった。

これらの脚本家は、他にも多数の脚本を書いて色々な映画の字幕でお目にかかったことがある、当時の日本映画を代表する人達であり、複数の有能な人が共同で推敲(すいこう)を重ねた結晶が黒澤映画であることがよく分かった。

◎毎日の朝食でカルシウムを頑張って摂ろうと思い「ちりめんじゃこ」を食べている。
今朝ふと見るとじゃこの中に体長2cmのイカの子が混じっていた。
イカとちりめんじゃこを並べてみると、小さいが不思議と形が備わり、それぞれに自己主張と存在感を発している。
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