「日本遥かなり・エルトウールルの奇跡と邦人救出の迷走」門田隆将著、PHP研究所刊を読み終えた。
このノンフィクション作品は
1985年 イラン・イラク戦争でのテヘラン脱出
1990年 湾岸戦争での「人間の盾」からの帰還
1994年 イエメン内戦からの脱出
2011年 リビア動乱からの脱出
近年起こった4つの「在留邦人救出」の物語を横糸にして、縦糸に、明治23年(1890)和歌山県串本沖で発生したトルコ軍艦エルトウールル号遭難事件の献身的な住民の救出活動が、時を経てトルコの親日感を醸成し、結果として1985年のトルコ航空機による邦人のテヘラン脱出に繋がること織り込んで描いている。
ノンフィクション作品なので当事者の証言が数多く出てくるが読んでいるうちに、各事例の日本人が置かれた緊迫の状況が、我が身の事に及んだ場合どうするかを自然に考えさせられる。
然し本書の最大の主張は、動乱や戦争状態に巻き込まれ民間機が飛ばなくなった地域の在留邦人に対し、日本が自衛隊機で救援することが出来ないことに対する怒りと問題提起に有る。
紛争地への自衛隊派遣は、対外的な武力行使になり得るとの憲法解釈上の反対意見から、法整備が充分出来ていない事がその源に有るのだが、自国民の救出、命を守る事がなぜ自衛の範囲と言えないのかが著者の問題提起の根源と言える
私も現役時代タイでクーデターに遭遇したり、上海で反日デモの現場に居たりして、前記の4事例には及びもつかないが、外国で身の危険を感じた覚えはあり、当事者証言の中にある「日本はわれわれを助けてくれないのか」「自国民の救出を他国に頼っていいのか」と言う嘆きは身につまされる響きがある。
またこの本から得た知識で、私の郷里に程近い山口県下関市はトルコ・イスタンブールと姉妹都市で、私も行ったことがある火の山公園にはテヘラン脱出の際、トルコ救難機の操縦をした機長の名を冠したチューリップ園が出来ているとのことであり、帰省の折りにでも是非訪れてみたいものだ。
読み終えた今も、頭の中をなかなか落ち着かない余韻が駆け巡っている。
近くの図書館脇で咲いている花