塩野七生さん「本を読んでいた政治家」

1937年生まれでローマ在住の作家・塩野七生(しおのななみ)さんは、「海の都の物語」「ローマ人の物語」「ギリシア人の物語」等で私を西ヨーローパ世界へと興味を向けさせて貰った恩人とも云える人だが、月刊雑誌・文藝春秋に「日本人へ」と名付けたコラムを長期に連載されており楽しみに読んでいる。

と言っても文藝春秋は近くの図書館で借り出して読むのが習慣で、どうしても新刊から数ヶ月遅れて読む事になる。

今回「本を読んでいた政治家」と題して元官房長官後藤田正晴氏を介して出会った、読書家である中曽根元首相との想い出が綴られている。

後藤田氏は「カミソリ後藤田」と言われ味のある政治家だった気がするが、中曽根氏は「政界風見鶏」と言われあまり良い印象は持っていなかったが、ここで書かれているエピソードの幾つかで少し印象が変わった気がしている。

◎初対面で、塩野さんの作品を評して
「きみの作品は金平糖(こんぺいとう)だね。口に入れてすぐに噛むと舌を切りそうになるが、我慢して口の中でころがしていると甘く変わってくる」

◎読書好きで知られた経済人の席で中曽根氏の関心の持ち方が具体的で、歴史上の人物の誰と言うより、その人が実施した政策自体に関心の的があることがわかった。

◎50年を越える作家活動のなかで特に嬉しかった評言三つのうちの一つが中曽根氏が言ってくれたひとこと。
「きみが書く歴史には艶(つや)がある」

私が塩野さんにひとこと贈るとすれば「ヨーロッパの歴史世界に触れさせて貰い、有り難うございます」なのだが。

「歩き」の道沿い、孤独にたたずむ水鳥
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