ベイルートの爆発事故とレバノン

レバノンの首都ベイルートの港湾地区で、爆発物原料と見られる多量の物質の爆発事故が発生し、多くの犠牲者が出ていることが連日報道されている。

政治の対応遅れに反政府デモも発生しているようで、何より早期の負傷者、被害者の救済が必要だが、その報道のなかで、レバノンの政治権力が特定の宗教勢力によってあらかじめ分配・統治されていると言う事を聞いて、今更ながらビックリと共に、既得権益の固定化は避けられそうもないとも思った。

・大統領がキリスト教マロン派
・首相がイスラムスンニ派
・国会議長がイスラムシーア派
と言う具合らしいが内戦のやむを得ない和解結果とはいえ、これではなかなか迅速なアクションは難しい気がする。

元々レバノン地域の民族の起源はアラブではなく海洋通商民族のフェニキア人らしいが、ギリシャ世界のアレキサンダー大王やローマ帝国による征服統治等の世界史的影響も受けているらしく、島国に住む者の感覚からは超越している部分がある。

フェニキア人は北アフリカカルタゴを建国、名将ハンニバルイベリア半島から象と共にアルプス山脈を越えてローマ帝国に侵攻し、地中海の覇権をかけたポエニ戦争を戦った偉大な歴史がある。

大統領がキリスト教徒で思い出したのだが、11世紀から13世紀にかけて、西欧世界がキリスト教の聖地エルサレムイスラム勢力から奪還するため起こした十字軍で、この間ベイルートを含む地中海沿岸沿いに、約200年間キリスト教を信仰する十字軍国家がいくつも存在した。

この事件を聞いて急に思い立ち、作家塩野七生さんの著作「絵で見る十字軍物語」と「十字軍物語全3巻」を読み直し始めている。
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一般にイスラエルを除いて、この地域全体にイスラム教を信仰するアラブ人がいると思いがちだが、個別に見ていくと地域ごとの特有の歴史や信仰の積み重ねを持った民族、部族が暮らしていることに今更ながら気が付く。

レバノンにはまだ行ったことは無いが、隣国のイスラエルには仕事で訪れたことがあり、地中海から町並みを抜けるとすぐ迫ってくる砂漠、農園、山岳地帯などの特有の風景が今も心に残っており、国の安定と復興を心から願っている。

近くの小学校、歩道沿いの花壇から連続して覗く花
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