椎名誠さんは私より5年先輩の、旅する作家、映画監督、写真家である。
また酒好き、ビール好きの方がより知られているかもしれない。
椎名さんが世界中を旅して出したエッセイや写真集は数知れずだが、これもその一つで、世界のいろいろな家族に出会いその感動を写真と共に集めた本である。
全部で17の家族が載っているが、最初のモンゴル遊牧民家族の章で「外国の旅ではホテルよりもその土地の家族の家にホームステイする方が好きなので、ずいぶんいろんな家族との付き合いをしてきた」と書かれている。
17家族の内最も笑顔の素晴らしいと思えた写真が載っていたのが第4章「家族でカイラス巡礼」
チベット人は一生のうち一度は、チベット仏教の聖地カイラス巡礼を果たすのが人生の夢で、ラサから約1000km離れた場所へ平均して4000mクラスの高地を旅していく。
村毎に巡礼団を組んでトラックを仕立てたり徒歩で。
もっとも厳しい苦行は、一歩進む度に体を大地に叩きつけ、拝みながら自分の身の丈だけ進む、五体投地拝礼で、これは日本の紀行番組でも見たことがあるが、地面に直接当たる腕、胴、足には思い思いの緩衝材が付けられているが直ぐにボロボロで凄絶な姿になる。この方法だと2~3年がかりはザラに有るらしい。
カイラスの麓のテント村(タルチェン)でこれから約52kmの巡礼道を一巡り(チベット仏教は右回り)するため準備する集団
〈子供たちの写真の、はにかむような写り方が、私の就学前に撮られた昔のモノクロ写真と、とても似ている感じがする〉
椎名さんがタルチェンで親しくなった若い夫婦と子供3人の家族、村の人達とトラックでやって来たが子供にはトラックの荷台は辛い道中で、これから一行と離れ、家族だけでカイラスを巡る準備中。
「子供が時折熱を出したりするので、医者のいないところを一年以上旅するのは不安もあるが、家族がこうして人生最大の巡礼の旅に出られるのだから、これほど幸せなことはない。」と語っていたそうである。
〈子供を前にして母親の笑顔がとても印象的、この笑顔は宗教を信じるところから来ているのか、「幸せとは何だろうか?」と問いかけられた気がして、記憶に残る一枚〉
近所の家で育てられている朝顔