刺客・荊軻(けいか)「易水(えきすい)の歌」

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近くの図書館で借りてきた新漢詩紀行・山河悠久篇に、刺客・荊軻の詠んだ、私の一番好きな漢詩「易水の歌」が載っている。

紀元前1世紀前後、歴史家・司馬遷が書いた中国の歴史書史記」は普通の歴史書がそうであるように、編年体と呼ばれる年代順に出来事を書いていく方式ではなく、人物毎にまとめたいわゆる「紀伝体」で書かれており、中国古代の人物、国、故事成語等のエピソードが大変多く含まれている。

余談だが作家・司馬遼太郎さんはこの司馬遷に対して遼(はるか)に及ばずとしてペンネームを司馬遼太郎としたことを自著で明らかにしている。

その「史記」に人を殺すことを目的にした人物を集めた「刺客列伝」があり記された5人の内の1人が、「秦始皇帝」の暗殺を試みた荊軻である。

荊軻が暗殺に赴く際、易水(現在の河北省を流れる)という川のほとりで見送りに来た人々の前で吟ったのがこの「易水の歌」と言われる。

「風 蕭々(しょうしょう)として 易水(えきすい)寒し
壮士一たび去って、復(ま)た還(かえ)らず」

暗殺を依頼した燕国(現在の北京周辺に有った国、秦の攻撃で滅亡)の太子が無理に荊軻に付き添わせた人物のせいで暗殺に失敗して殺される事になるが、まるでこの先を予感させるような歌でもある。

この事実をふくらませたストーリーで「始皇帝暗殺」という映画が20年くらい前に、中国、日本、フランスで合作、公開されたが私は上海で観たような気がする、その時の原題は「荊軻刺秦王」で何と直接的な題だろうかと思ってしまった。

先日植えたサツマイモが元気な様子
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