コロナ時代の部品供給と3Dプリンター

日経電子版と日経新聞本紙のコラム「Deep Insight」で〈「どこでも製造」は夢物語か コロナ時代の供給網探れ〉と題して
3Dプリンターの活用について面白い記事が載っている。

コロナウイルス感染者が急増した今春、パリ公立病院連合が急きょ米国製3Dプリンターを導入して、供給不足に陥ったフェースシールドや薬剤注入ポンプを現場で自作することを始めている。

・これは一例で各国の企業や技術者が協力して設計データを公開し、人工呼吸器の部品などを3Dプリンターを利用して製作している。

・世界に張り巡らされたサプライチェーンは様々なリスクに対して弱点があり今回のコロナ危機でもそれがあらわになっている。

・3Dプリンターの有力メーカーでもあるIT企業・米国HPは次世代の供給網として3Dプリンターを各所に配置、造形データとロボットがあれば自動化率が高く不測の事態にも対応できる工場作りを以前から提唱していた。
また率先垂範で自社で使う部品を3Dプリンターによる内製への切り替えも進めているらしい。

◎現役時代製造業に携わり、家庭での内職加工から、鉄鋼産業まで殆んどの業種の製造現場、色々な企業の現場をみてきたが、残念ながら3Dプリンターによる製作現場に立ち会った機会は無く、一度是非観てみたいと思っている。

現状得ている情報による以下は私見だが、

3Dプリンターによるもの作りは一般に、AM(Additive Manufacturing)加算造形、またはALM(Additive Layer Manufacturing)積層造形と呼ばれており、私達が馴染んできた切削加工のような方式の反対といってもいいのだろう。

粉末にした金属や液状にした樹脂をCADデータをもとに積層して形状を作っていくのだが、例えば金属の場合レザーや炉を使って焼結する方式が多いようだが、その場合加熱後の寸法精度や強度はどうなのか個人的に気になるところがある。

いずれにしても量産性は私達の時代をずっと支えた、従来の金型方式が圧倒的だと思うが、金型方式の泣き所は、金型製作に時間と費用がかかり、保管を伴うことと、今回の医療用部品等に見られるように補修部品、サービス部品のような少量部品の多方面への供給に難があることで、裏返すとこの辺りに3Dプリンターによる生産の活路があると思われる。

私も現役時代、たった一個のサービス部品を調達するために、古い昔の金型を探し回った苦い経験がある。

今後当然ながら大量生産から多品種少量生産傾向がさらに進むと予測されるなかで、サプライチェーンリスクヘッジも兼ねて、今は開発試作等に留まっている3Dプリンターの、製造業量産現場への出番が予測を越えて早く拡がるかも知れない。

庭で咲き始めたサンパラソル
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