郷愁と鮭の「母川回帰」の関係

故郷から大阪に出て半世紀、故郷で過ごした倍の時間を大阪で住んだ事になるが未だに大阪の歴史より故郷の歴史の方に興味がある。

同級生のメールにも郷愁のことが書いてあったがこの想いは鮭が生まれた川に帰ってくる「母川回帰」と全く同じで動物が固有に持っている本能の一端ではないかと思うのだが科学的に見るとどうなのだろうか。

日経新聞が、日本の川で捕れる鮭の多くは米国アラスカ州近くのベーリング海大陸棚まで回遊している事が科学的に突き止められた事を報じている。

プランクトンのアミノ酸に含まれる窒素同位体の割合が海域毎に異なることに着目し鮭の背骨は年輪状に成長し滞在海域の割合が反映されることから、大量の鮭の背骨を分析してベーリング海大陸棚を割り出したとのことである。

元々鮭が海に帰るのは3~5年海の餌でエネルギーを蓄え川での産卵に使うと言われており餌の多いベーリング海で一定サイズまで成長して川に帰ってくる。
地図で見るとベーリング海は日本から約5000km離れておりこれを子孫を残す本能に導かれ往復して、母なる川に帰ってくることは鮭にとって想像を絶する大事業の旅だろう。

自分の生まれた川の見分け方はアミノ酸の違いによって生ずる匂いの違いを利用するらしいがその川の近くまで来る方法はまだ諸説有って決定的なことは不明らしい。

この匂いだが、世界の空港、特にアジア各国の空港に降り立つと各々何時行っても同じ、その土地独特の匂いが有ることを会社員時代常々感じていた。
鮭も同じように各川口付近に到着し匂いの違いを感じているとすれば面白い。

これ等動物の生態研究を通じ人間の持つ「郷愁」の正体が科学的に解明される日が何れ来ると思っている。