治水3傑と越流する堤防

NHKBS放送で「英雄達の選択」という番組があり歴史上の人物が分岐点でどんな決断をしたのか追跡する番組で、番組表から人物を見て時折録画する。
先日はちょっと変わった趣向で、最近の豪雨水害多発の状況から歴史上治水に心を砕いた3人の活動が「治水3傑」として紹介された。

武田信玄ーー戦国時代甲斐(山梨県)の釜無川等で色々な種類の堤防を築き洪水と共存する治水術を実行した。
②津田永忠ーー江戸時代岡山の旭川に並行して人工放水路百間川を作り、新田開発と合わせて強い意思で治水を成し遂げた。
金原明善ーー明治時代天竜川一帯に植林し、運輸、製材、銀行等の設立と合わせ地域も含めた治水システムを作った。

私の故郷山口県厚狭でも10年前に厚狭川が氾濫し今日の商店街がさびれていく原因になったが、その厚狭川を定期的に観察するにつけ土砂の堆積や堤防の劣化など心配は尽きず、また住んでる近くに奈良から大阪湾に注ぐ大和川が流れていることからも治水については大いに関心があり、2018年7月25日の朝日新聞「声」欄に河川保全について投稿掲載された。

番組の中で河川治水学が専門の新潟大学名誉教授大熊孝氏が今後の日本の治水について、私にとって「目からうろこ」の提案をされていた。その要旨は
「越流しても破堤しない堤防を作る」(堤防から水が越えていくことはあっても堤防の決壊だけはない)という考え方である。

すなわち、絶対に洪水にならないゼロリスクの堤防を目指すのではなく十年に一度の洪水なら堤防を乗り越える水は許容して、その代わり堤防は決壊せず持ちこたえる状態にするというもので簡単に言えば玄関先や床下迄水が来ることは予め覚悟して、命が脅かされることは絶対に避けるというものであろう。
これであれば技術的に充分可能で資金も少なくて済む。

色々な川を見るにつけ河床は年々土砂で埋まっていく、また財政面からも少子高齢化でインフラ投資には厳しさが増す、温暖化もあって異常気象は収まらない等々から考えていくと、今こそゼロリスク信仰から抜け出し、提案のような治水の取り組み方大転換が妥当と思う。