クモの糸由来の人工タンパク質繊維

昨年(2019)初頭以降に時折マスコミに取り上げられるようになったスタートアップ企業で山形県に本拠があSpiber(スパイバー)社に注目している。

社名はスパイダー(蜘蛛)とファイバー(繊維)から来ておりクモの糸をヒントに人工タンパク質で出来た繊維で、化学繊維が誕生して以来の新繊維革命を起こすことを目指している。

37歳の創業者は大学でクモの糸に着目、遺伝子研究をふまえて、微生物を発酵させることで人工タンパク質を生み出し、更に培養して糸の原料になる様々な性質の繊維を作り出そうと起業した。

この繊維は石油由来でもなく、また動物の犠牲もなく今の時代に要求される環境や倫理面から見ても世界に訴求出来る可能性を持っている。

私の子供時代、夏になると近所の庭や藪を回って竹にクモの糸を巻き取りその粘着性を利用して蝉を沢山取っていた。確かにクモの糸は強くてとても丈夫だったが反面朝露や雨には滅法弱く直ぐ使えなくなった記憶がある。

この繊維を使用してスポーツ用品のゴールドウインと共同開発したアウトドアジャケットが昨年12月限定発売された。この場合もクモの糸と同じく耐水性の大きな壁があったらしい。
環境や倫理面の優越性から世界のアパレルブランドから既に引き合いも来ているとのことである。

来年には生産量拡大のためタイ・ラヨーン県の工場が稼働、本格的な受注が始まる。更に会社のホームページには将来の米国生産も計画している事が掲載されている。
〈ラヨーンはバンコクの東南に位置する海岸が美しい県で、私もタイ駐在時に何度か訪れた懐かしい響きの土地である。〉

日本の地方でワクワクするような夢のあるスタートアップ企業が育っていることがとても嬉しい。この後も当然、紆余曲折や壁も立ちはだかると思うが是非乗り越え成長して欲しい。