感染症と人の移動との関わり

このところ毎日のマスコミ報道はコロナウイルス一色だが、録画して見た今週「サンデーモーニング」の中で専門家とコメンテーターがとても興味ある対話をしていた。

私なりに興味を覚えた事を整理すると次の3点である。
・若し現在のようなモノや人の移動が激しい時代でなかったら今回のコロナウイルス武漢湖北省辺りの風土病で終わっていたかもしれない。
・歴史的に見ると人の大きな移動や流れに伴い伝染病や感染症の大流行が発生している。
・今回のウイルスは高齢者や特定の疾病にかかっている人と他の人とに致死率で大きな差がありこの事を第一に踏まえたリスク管理と、経済などの日常活動とのバランスを取っていく必要がある。

特にこの〈人の移動と感染症の流行〉に関して厚生労働省のホームページのなかに感染症危機管理専門家の一人水島遼氏の「歴史から学ぶヒトの移動に伴う感染症の移動」というコラムがあり見つけて読んだが、その中の歴史的事実を列挙すると、

・西暦165年ローマ帝国のシリア遠征で帰国した兵士を通じた天然痘が流行し帝国内人口の4分の1が死亡。
また同帝国内ではアフリカや中近東から来た奴隷によりマラリヤ流入ローマ帝国滅亡の要因にもなった。

・日本では遣唐使の時代に中国から天然痘流入藤原氏の当主等も含み多数が死亡し政治的な混乱が発生した。

・14世紀ヨーロッパのペストの大流行はモンゴル・チンギスハーンの西進が中国雲南地方起源の菌を持ち込んだ為で、当時のヨーロッパ人口3500万人のうち約3分の1が死亡した。

大航海時代に新世界アメリカ大陸へヨーロッパからの入植者が天然痘、麻疹などを持ち込み例えばメキシコでは元々3000万人弱いた人口が17世紀には150万人迄減少した。

コレラについてはインドから起こった第一次世界流行を皮切りに産業革命と並行して6回の世界流行を引き起こしている。

スペイン風邪第一次大戦末期1918年に全世界で5000万人~一億人が死亡した。

これは私の主観だが、今コロナウイルス感染の中心がアジアからヨーロッパに移りつつあるが、現在EU諸国間ではヒトやモノの移動が殆んど無制限になっていた事が背景の一つにあるかもしれない。

ヒトやモノの移動を前提にしたグローバル化の中で、感染症は大きな負の側面だが、東京オリンピックも莫大なヒト、モノの移動を伴う究極のグローバリゼーションの形であり、これ等の歴史的事実を踏まえた取り組みや判断が今後の日本に問われる事になる。