イスタンブール運河計画

トルコのイスタンブールは私がまだ訪れていない都市の中ではこれから最も観ておきたい場所の一つかもしれない。
朝日新聞等が大きく記事にしているが、ここに全長45kmの大運河を建設する計画があり今年工事入札が予定されているとの事である。

イスタンブールは周知の通りヨーロッパとアジアをわけるボスポラス海峡上にあり一つの都市でヨーロッパとアジアにまたがる珍しい形態である。

ボスポラス海峡黒海からギリシャ側のマルマラ海を経て地中海に至る航路にあり、周辺国や覇権国にとって経済軍事両面共に極めて重要な戦略的要地で、例えば軍艦の通行等が条約によって制限されている。
ナイチンゲールの献身が有名になったクリミア戦争(1853~56)やロシア・トルコ戦争(1877~78)はロシアの南下政策がもたらしたこの海峡の支配を巡る争いでもあった。

運河計画はこの海峡の船舶通行が近年混雑を極めていることから計画されたとされ、海峡の西側に並行して通し、湖や既設のダムを経由する経路で、通航料収入を狙う。
7年の期間と日本円換算1兆2800億円の工事を見込む。
米・露等大国や沿岸各国の安全保障に絡む思惑や、環境保全問題などまだまだ紆余曲折がありそうに思われる。

ギリシャ神話のトロイア戦争アレキサンダー大王のペルシャ遠征、ローマ帝国の東方経略、オスマン帝国によるコンスタンテイノープル(イスタンブール)陥落と東ローマ帝国の滅亡等々、数千年に渡るこの海峡を挟んだ東と西の物語であり、ここに更に大運河という新しい歴史的事業が加わる事になる。