神農さんとフーテンの寅さん

史跡・適塾のすぐ近くにある薬の町、大阪市中央区道修町(どしょうまち)に薬祖神・少名彦名命(すくなひこなのみこと)を祀る神社で大小の薬品会社が氏子になっている少彦名神社がビルの谷間に鎮座している。
この神社は別名「神農さん」と言う「通り名」の方が有名だが、これは中国の薬祖神・神農氏を合わせ祀っている事に由来する。

実はこの「神農さん」と言う呼び名から、私はずっとこの神社が「フーテンの寅さん」と同じ生業(なりわい)の露店商の人たちの神社と思ってきた。
もう半世紀大阪に住んでいるが薬の神様と知ったのは適塾を訪れたときに立ち寄って分かった最近の事である。

中国発祥の神農氏は薬以外も色々な職業の神様になっており、商業神であることの繋がりから、寅さんのような露店商の人達自身を神農と呼んだりこの人々の信仰の対象にもなっている。

ところで誰もが大切に持っていると思われる祭りや縁日の露店を巡った想い出だが、私の子供時代の懐かしい記憶は、ふるさと厚狭の川辺りにあった天満宮のお祭りで、毎年ほぼ同じ場所に店開きしていた沢山の露店である。

とりわけ粟おこし等が景品になっていた相撲クジのおじいさんの「ハイ! 関東、関西は大相撲の季節!!」という口上が、60年近くを経た今でも耳に残る想い出になっている。