歴史の彼方から

生誕100年 司馬遼太郎 雑談「昭和」への道

今年は作家・司馬遼太郎さんの生誕100年に当たると云うことで記念の出版や行事が実行されている。 NHKでは昭和61年に放送された雑談「昭和」への道と題したシリーズを記念番組として再放送されている。私は今まで観た記憶が無いのでこの際と思い第一回…

「鎌倉幕府の滅亡」

細川重男著「鎌倉幕府の滅亡」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は鎌倉時代を専門領域とする歴史家らしく、本のあとがきに、「卒論・修士論文・博士論文を含め、これまで発表してきたすべての研究論文・研究書は、本書を書くための基礎作業であったといって…

「山陽町史」⑦箱田氏と惣社(そうしゃ)八幡宮

現在厚狭の郡(こおり)地区にある惣社八幡宮は加藤地区にある鴨神社とならんで地域のなかで最も古く由緒のある神社である。 2020年に撮った参道から神社を見上げた写真、時間がなく社殿に行けず。 社伝によれば、箱田小太郎広貞が末益村に社を建て文治3…

司馬遼太郎さんの随筆⑤・統帥権(とうすいけん)

昭和史家や昭和史に造詣の深い作家、評論家が日中戦争や太平洋戦争を論じる場合善かれ悪しかれ必ずその対象の一端が統帥権に当てられる。 統帥権とは軍隊を動かす権限のことで、明治憲法下でプロシア(ドイツ)憲法に倣って規定された条項では、この軍隊を動か…

「村・百姓たちの近世」

長く中断していましたがぼちぼちと復帰しようと思います。今までと違い2~3日に一回のペースで無理せず気長に行きたいと思いますのでどうぞ宜しくお願いします。 水本邦彦著「村・百姓たちの近世」岩波新書 刊を読み終えた。 著者は日本近世史の専門家で村社…

中断中の独り言・土佐人のことなど

現在終盤を迎えているNHK朝ドラ「らんまん」は土佐生まれの植物学者・牧野富太郎をモデルにしたものだが、演じているのが現代の若者の代表格とも云える神木隆之介さんなので、高知県の若者には申し訳ないが、どうも私の持つ土佐人のイメージからは程遠い気が…

中断中の独り言・「らんまん」の神社合祀

NHKの朝ドラ「らんまん」はいよいよラストスパートにかかって来ているなか、主人公の万太郎が、和歌山県在住の著名な民俗学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)の影響や、神社の森の植物へのダメージなどを考え、明治政府の神社合祀政策に反対しようとするストー…

中断中の独り言・ふるさと厚狭の前方後円墳②

9月9日の続き ①長光寺山古墳 江戸時代初期、厚狭毛利家入部後の菩提寺・洞玄寺(とうげんじ)は厚狭川の右岸、郡地区下津(しもづ)にあるが、元々その地には古くから長光寺(ちょうこうじ)という名の寺があり荒廃していた跡地に寺号を改め建立されたものである…

中断中の独り言・ふるさと厚狭の前方後円墳①

古墳時代は3世紀中頃に始まり7世紀中頃まで続いたと云われる。その最盛期は4世紀後半から5世紀後半であり、この時期に築造された古代日本の大王たちの墓群は「百舌鳥古市(もずふるいち)古墳群」として世界遺産に登録されている。 私が大阪に住んでいた頃…

「明治国家をつくった人びと」

瀧井一博著「明治国家をつくった人びと」講談社現代新書 刊を読み終えた。 幕末から明治にかけて西洋の文物を導入して、それを制度化することによって自立し、国際社会の一員になることは当時の国家的願望であり、藩閥政府、在野の民権指導者達の共有すると…

「家康はなぜ乱世の覇者となれたのか」

安部龍太郎著「家康はなぜ乱世の覇者となれたのか/世界史の視点から読み解く戦国時代」NHK出版 刊を読み終えた。 小説家・安部龍太郎さんは安土桃山時代の画家・長谷川等伯を描いた「等伯」や、遣唐使の時代を紐解いた「ふりさけ見れば」などの作品で当代き…

中山忠光の暗殺事件

日経新聞に連載中の辻原登さんが陸奥宗光の青春を描く「陥穽(かんせい)」では主人公・陸奥小二郎は勝海舟の神戸海軍操練所の開設入塾に向けて勉学に励もうとしている。 この時代背景を表すなかで公家・中山忠光の暗殺が描かれている。この暗殺事件は我が長州…

「マクナマラの誤謬(ごびゅう)」

NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀・バタフライエフェクト」のなかで「マクナマラの誤謬」が放送され長い間録画していたのを観終えた。 放送からかなり時間を置いて観てしまったが、もう少し早く観るべき番組であったかも知れない。 誤謬とは単純に…

「幕僚たちの真珠湾」②

昨日8月15日の続き、 国家の曲がり角とも言うべき昭和15年(1940)から昭和16年(1941)にかけての陸軍中枢幕僚が関係した重要施策をピックアップする。 ・日中戦争を早期に解決するというのが当時の大きな課題であったが、陸軍が国策として提示…

「幕僚たちの真珠湾」①

波多野澄雄著「幕僚たちの真珠湾」吉川弘文館 刊を読み終えた。 図書館で借りた本なので書き込みが出来ないため、通常気になった箇所には付箋を貼って後でその部分を読み返して剥がすのを常としているが、この本はその付箋の数が41と近来にない新記録で、…

「出雲尼子(あまご)一族」/夕虹

ふるさと厚狭(現在山口県山陽小野田市)に縁があった出雲国(いずものくに・島根県)出自の戦国武将・三澤氏の足跡をたどるとどうしても出雲を本拠地とした戦国大名・尼子氏と向き合わざるを得ない。 これは一度尼子氏に関する本を読んでみなければと思い図書館…

代表的日本人100人②・緒方貞子

文藝春秋八月号の特集「現代の知性24人が選ぶ代表的日本人」で複数の人から名前が挙がっている人物を見ると、和算・関孝和、源氏物語・紫式部、古事記伝・本居宣長、最後の将軍・徳川慶喜、真言密教・空海などである。 個人的には鳥羽・伏見の戦い後大阪城…

映画「スパルタカス」

NHKBSプレミアムで放送された「スパルタカス」を長い間録画したままだったがようやく観終えた。 1960年のアメリカ映画で、云うまでもなく古代ローマの実在の人物で奴隷剣闘士であったスパルタカス(スパルタクス)を中心にした大反乱「スパルタカスの反乱…

「山陽町史」⑥源平合戦と松嶽山正法寺(まつたけさんしょうほうじ)

古代史の最終局面、中世史の幕開けを告げるのが源平合戦である。兵庫一ノ谷、四国屋島で敗れた平氏は安徳天皇を奉じて全軍、長門国彦島(現在の下関市)に集結した。 源氏で先んじた源範頼は九州に入り平氏の背後を断ち、屋島で勝利した源義経も長門に下り寿永…

司馬遼太郎さんの随筆④浅井長政の裏切り

司馬遼太郎さんの大作・「街道をゆく」のなかの「近江散歩」を読んでいる。近江国(おうみのくに)は現在の滋賀県の旧国名である。 近江は元々「近淡海国」(ちかつあふみ)と呼ばれ都に近い淡水糊・琵琶湖を表した国名である。 余談に成るが現在静岡県の一部に…

「戦国武将三澤氏物語」⑤厚狭へ

7月31日の続き 天正17年(1589)豊臣秀吉に従属した毛利輝元は中国八ヶ国の太守として広島城を築城して吉田郡山(よしだこうりやま)城から移ることになる。 三澤氏第十代為虎はこの際、築城指南役を命ぜられ、家臣100人卒600人を引き連れ奔走し…

「怪しい戦国史」

本郷和人著「怪しい戦国史」産経新聞出版刊 を読み終えた。著者は東大史料編纂所の教授で最近色々なマスコミにも登場している日本中世史の専門家である。 表題そのものが怪しいが、著者が産経新聞に連載中の「本郷和人の日本史ナナメ読み」というエッセイの…

「児玉源太郎 明治陸軍のリーダーシップ」

大澤博明著「児玉源太郎 明治陸軍のリーダーシップ」山川出版社刊 を読み終えた。 私は山口県の出身なので、世間には多少否定的な受けとめがあるいわゆる長州閥について、つい擁護したくなる潜在意識を持っているが、明治維新を経て明治から大正、昭和初期に…

「戦国武将三澤氏物語」④尼子・大内・毛利の狭間で

7月20日の続き 1470年頃には出雲国(いずものくに・島根県)の国人(こくじん・在地領主)のなかで中心となるような成長を遂げた三澤氏であるが、応仁元年(1467)の応仁の乱に始まる戦乱の時代は、数ヵ国を一元的に支配する戦国大名の争いの狭間で揺れ…

「昭和の怪物 七つの謎」

保阪正康(ほさかまさやす)著「昭和の怪物 七つの謎」講談社現代新書 を読み終えた。著者の保阪正康さんはノンフィクション作家だが昭和史研究家の側面も持たれ先の戦争に関わる著作も多く何れも説得力がある。 題名はかなり奇をてらったように見えるが内容は…

司馬遼太郎さんの随筆③「芸備(げいび)の道・安芸(あき)吉田」

司馬遼太郎さんの大作「街道をゆく」の第六巻に「芸備の道」がある。ここでの芸備とは旧国名の安芸国(あきのくに)と備後国(びんごのくに)を指し現在の広島県に当たる。 そのなかで司馬さんは毛利元就を生んだ高田郡吉田町(現在安芸高田市)へ向かうのだが、近…

「語り継ぐこの国のかたち」②

7月21日の続き この本の内容で「なぜ無謀とも言える太平洋戦争に突き進んだか」に繋がる部分での二番目の内容。 ②昭和の誤りの遠因は日露戦争にある。 日露戦争の勝ちというのは(海軍の日本海海戦は完全勝利だが)陸戦の勝敗では本当の勝ちではない。あ…

『東アジアからみた「大化の改新」』

仁藤敦史著『東アジアからみた「大化の改新」』吉川弘文館 刊(歴史文化ライブラリー555)を読み終えた。著者は日本史の専門家で特に古代史について色々な著作がある。 よく知られているよう「大化の改新」とは飛鳥時代皇極天皇4年(645)中大兄皇子、中…

「語り継ぐこの国のかたち」①

半藤一利著「語り継ぐこの国のかたち」大和書房 刊を読み終えた。 半藤さんは「文藝春秋」の編集長を勤めたジャーナリスト出身だが、むしろ昭和史研究家や「ノモンハンの夏」「日本のいちばん長い日」などのノンフィクション作家としての顔が著名かも知れな…

「戦国武将 三澤氏物語」③たたら製鉄

たたら製鉄は砂鉄と木炭を原料にして粘土製の炉のなかで高温燃焼させ鉄を取り出すもので、古墳時代には大陸から日本に伝来していたといわれ、近代初期までは盛んに行われていた。たたらとは炉に空気を強制的に送り込む大型の「ふいご」のことである。 ジブリ…