歴史の彼方から

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など④菜香亭の書

大会を終えて、同級生に山口市にある「菜香亭(さいこうてい)」に連れて行って貰った。明治時代に山口の迎賓館と呼ばれた料亭で元々別の場所にあったが、廃業を惜しんだ市民の請願で、現在地に観光や市民交流の場として移築公開されたものであるらしい。 広間…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など③発表内容

記念大会のテーマ『萩藩「一門」研究の新展開』の発表内容については専門的内容が多く濃いため、ここでは発表された六つのテーマについて簡単な紹介に留めさせてもらうことにした。 (尚一門家についての基礎的なあれこれは11月28日のこのブログを参照下…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など②大村神社

記念大会聴講の前日、中学同級生の案内で長州藩の明治維新立役者のひとり大村益次郎の生地に、本人を祀って建つ大村神社に連れて行って貰った。 少しおさらいをすると大村益次郎は周防国(すおうのくに)鋳銭司(すぜんじ)村(現山口市)の村医者の子として生まれ…

山口県地方史学会創立70周年記念大会聴講と史跡訪問など①一門あれこれ

専門外ながら入会させて貰っている山口県地方史学会の70周年記念発表会が11月26日に山口市の県立図書館で開かれ、そのテーマが私が追跡している厚狭毛利家を含む、『萩藩「一門」研究の新展開』ということもあり、是非にと思い聴講に出掛けてきた。 ま…

芭蕉「旅に病で」

先日大阪・御堂筋にある南御堂に用事があり、境内庭園の芭蕉の句碑を紹介した。芭蕉は元禄7年(1694)生地・伊賀上野から奈良を経て大阪に着き体調を悪くする。 門人達の手で病床を当時南御堂前にあった出入りの花屋の静かな座敷へ移しそこで臨終を迎えた…

岸 信介「日米安保条約と私」

中学同級生から山口県の郷土資料を同窓会にハンドキャリーして貰った中に、郷土出身の元総理大臣・岸信介氏の書いた「日米安保条約と私」と題した本人の回顧文のコピーが入っていて、興味を持って読み終えた。 これは昭和57年(1982)に出版された本「証…

お土産の「調布(ちょうふ)」

一緒に大阪へ行く用事があり岡山県倉敷市に住む娘が訪ねて来たが、そのお土産のひとつに岡山銘菓「調布」というのがあった。 「調布」という名は東京都内の地名で馴染みがあったが、菓子の名前で「調布」とは初めてで興味が湧き、その由来を読むと以下のよう…

「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」②

11月14日の続き 太平洋戦争に至る道程のなかで日本が世界から「どちらを選ぶか」と問われた3回の重要分岐点について、なぜ日本はより良き道を選べなかったのかを史料を読み込み考えるのがこの本(若者への講義録)の著者の狙いである。 私は何度もこの道…

ウクライナ軍総司令官のインタビュー

ロシアの侵攻に始まったウクライナ戦争は、ウクライナ軍が反転攻勢を始めて5ヶ月近く経つがニュースを見る限り膠着状態に陥っているように見受けられる。 また新たに始まったイスラエルとパネスチナとの争いに世界が注目し、ウクライナは遠くに見えてしまう…

戦国時代山口県の豪族・江良(えら)氏

先日の同窓会に郷土史の資料をハンドキャリーして貰った同級生の地元は現在の周南市鹿野(かの)で、その資料のなかに鹿野地域を地盤とした戦国期の豪族・江良氏の名前がある。 江良氏については2021年4月9日のこのブログに、『評伝「毛利元就」と周南・…

「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」①

加藤陽子著「戦争まで/歴史を決めた交渉と日本の失敗」朝日出版社刊を読み終えた。 実はこの本を借り出すきっかけは図書館の本棚で著者名を見たからで、2017年菅内閣の折、日本学術会議のメンバー選定に際し会議からの推薦者の内、6名の任命拒否者のひ…

英雄たちの選択「暴れん坊公家 平安朝を救う~藤原隆家 刀伊の入寇事件」

日本への外敵侵略事件はなんといっても知られているのは鎌倉時代のモンゴル族・元王朝による元寇であろう。 しかし平安時代の中期・寛仁3年(1019)、満州女真族(じょしんぞく)が対馬、壱岐、九州を襲った「刀伊入寇(といにゅうこう)」について知る人は少…

「織田家臣団の謎」

菊地浩之著「織田家臣団の謎」角川選書 を読み終えた。著者は別に「徳川家臣団の謎」という本も出されているらしいが、専門は企業集団や系列の研究など経済学にあるらしい。 そのためこの本の中には従来の定説とは違った見解をされている箇所がかなりあり、…

塩野七生・「点と線」を読む

いうまでもなく塩野七生さんはイタリア在住の作家で、大作・「ローマ人の物語」など西洋史に題材を得た歴史エッセイなどで本年度文化勲章を受賞され、また私を西洋史の世界へ導いてくれた人でもある。 「点と線」はこれも殊更いうまでもなく作家・松本清張さ…

関西地区同窓会と踏海(とうかい)とは?

昨日は大阪北新地で約1年ぶりの厚狭中学校の同窓会、山口県からわざわざ来て貰った2名を入れて、合わせて10名の参加であった。 本来6月に開催の予定であったが台風直撃予報で延期になり今回に持ち越されたもの。 いつもこの会で思うのは、半世紀以上の…

ブラタモリ・山口県特集(最終回)③錦帯橋と岩国

今回はメインが山口県岩国の錦帯橋、木製のアーチ橋でその美しさや耐久性で余りにも有名な江戸時代からの橋である。 番組では錦帯橋の構造から洪水などに対する耐久性の強さが解き明かされ、機能美として際立っていることが説明される。 その後この橋が、岩…

ブラタモリ・山口県特集②萩の街

これは2018年に放送されたものの再放送らしく、タモリさんに同伴するのは今はニュースが本業になっている 林田理沙アナウンサー。 萩の地形や地質などから解き起こし、なぜ現在まで古い武家屋敷群が残り世界遺産・「明治日本の産業革命遺産」の一部にな…

ブログ投稿1500回目・「ブラタモリ」山口県特集①秋吉台と厚東(ことう)

NHKの番組「ブラタモリ」で、どういう訳か最近再放送も含めて3件たて続けに山口県の関連が連続して放送され、山口県在住の同級生LINEにも連絡があり録画しておいた。 ここに来てようやく3件とも連続再生して観終わったが、何れも何らかのかたちで歴史に関…

「東郷平八郎」

田中宏巳著「東郷平八郎」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は経歴をみると防衛大学教授などを勤めた軍事史の専門家で太平洋戦争に関する著作も多い。 この本は日露戦争の日本海海戦を指揮してロシアバルチック艦隊に完勝して世界的に名声を博した東郷平八郎…

歴史探偵・高杉晋作 歴史を変えた力とは!?

山口県は民謡不毛の地といっても言いかもしれないが、そのなかで唯一多少知られた存在が「男なら」、幕末長州藩が沿岸防備のために御台場(砲台)建設に庶民を動員した際に労働歌として唄われたと伝わる。 歌詞の1番、2番は女性の立場で、お国の大事に際して…

「日本の参謀本部」

大江志乃夫著「日本の参謀本部」吉川弘文館 刊を読み終えた。 著者は日本の軍事史研究では著名なひとりで2009年に死去されているが、沢山の著作があり私も日本の軍事史にはかねてより興味があり「日露戦争の軍事史的研究」などを読んできた。 この本は日…

山陽町史⑧松嶽山正法寺と元寇(げんこう)

8月8日のこのブログ山陽町史⑥に書いたように、厚狭の象徴のひとつ松嶽山・正法寺(中世の頃は松嶽寺とも呼ばれた)は源平壇ノ浦合戦の際、軍兵に襲われ全山焼失して寺伝、寺領等が皆無となった。 戦火より38年後、貞応2年(1223)正法寺の僧・大賢は再…

映像の世紀バタフライエフェクト「砂漠の英雄と百年の悲劇」

NHKで再放送されたドキュメンタリー番組・映像の世紀バタフライエフェクト「砂漠の英雄と百年の悲劇」を録画して観終えた。 再放送は現在のパレスチナ、ガザの戦争状態を踏まえ、その根源の一部を解き明かした内容が時宜を得たものだと思われたのだろう。 バ…

『「昭和天皇実録」を読む』

原 武史著『「昭和天皇実録」を読む』岩波新書 を読み終えた。 著者は元日本経済新聞の社会部記者で昭和天皇の最晩年を取材、後に日本政治思想史の専門家となる。 昭和天皇実録は云うまでもなく宮内庁が編纂した昭和天皇の伝記で、2014年に24年の歳月…

私の代表的日本人・柴 五郎

月刊誌・文藝春秋には今年8月号から作家で数学者でもある藤原正彦氏が「私の代表的日本人」を連載されている。 第一回が江戸時代の数学者・関孝和、第二回が江戸時代の米沢藩主・上杉鷹山、そして今回10月号が第三回の柴五郎である。 会津人・柴五郎はあ…

「関ヶ原研究会」

先日の産経新聞に、関ヶ原合戦の地元・岐阜県関ケ原町で新たに「関ヶ原研究会」が設立され、会長に中世史特に戦国時代が専門でTVの歴史番組の常連のひとり小和田哲男氏が就いて、新たな研究の進展を若手に促すということが掲載されていた。 関ヶ原合戦につい…

厚狭毛利家の開作②梶浦開作(古開作と沖開作)

昨日10月15日の続き 厚狭川河口西側部分の開作・干拓事業はすでに寛延2年(1749)厚狭毛利家五代・元連、安永年間(1770年代)七代・就宣の時代に藩府に許可を願い許されていた。 しかし実際に着手に至ったのは天保6年(1835)九代・元美の時代…

厚狭毛利家の開作(かいさく)①開作あれこれ

先日私の故郷・山口県厚狭在住の中学同級生から、稲を昔ながらの天日干し(はさかけ)する田んぼの写真がグループLINEに送られてきた。 場所を確認すると江戸時代に干拓で出来た土地(古開作)であり、そういう土地で稲作が連綿と続けられていることに感慨を覚え…

司馬遼太郎さんの随筆⑥国民国家

江戸時代は身分社会でいわゆる士農工商の差が歴然としていたとされる。一般的に庶民といわれる農工商に属する人々は、年貢を始めとする税を搾り取られ窮屈な世渡りを強いられていると否定的に捉える見方が一般的である。 一方この事を肯定的に見て、それ以前…

塩野七生・「能力」と「素行」

イタリア在住の作家・塩野七生さんは月刊誌・文藝春秋に毎号「日本人へ」と題したエッセイを連載されている。 内容は海外からみた場合の日本人に警鐘を鳴らすものが多いが、大部の「ローマ人の物語」「ギリシャ人の物語」「十字軍物語」などを書かれた作家ら…